エイゾスのMulti-Sigmaを用いた研究論文が公表されました。(Role and Potential of Aluminium and Its Alloys for a Zero-Carbon Society:Materials Transactions, Vol. 64, No. 2 (2023))

論文背景

熊井真次 東京工業大学(現:東京科学大学)特任教授 (名誉教授)が発表された論文「Role and Potential of Aluminium and Its Alloys for a Zero-Carbon Society」において、株式会社エイゾスのノーコードAI解析プラットフォームであるMulti-Sigmaを用いたデータ分析が行われました。

世界的に環境問題に注目が集まっている中、上記の論文ではゼロカーボン社会実現のためにアルミニウムとその合金が有するポテンシャルについて分析が行われています。アルミニウムの新地金の製造プロセスは、バイヤー法やホール・エルー法といったエネルギー集約的で温室効果ガス排出量が多い工程を含みます。また、現在日本国内ではアルミニウムの新地金製錬を行っておらず、アルミニウムの生産に関しては海外へ過度に依存した状況です。一方で、アルミニウムは融点が低く、スクラップから再生地金を製造する場合には温室効果ガスの排出量がごく僅か(温室効果ガス排出量は新地金製造時の約3%)であるため、上述の課題を解決するためには、国内のスクラップから高純度のアルミニウムを取り出すリサイクル手法であるアップグレードリサイクルが注目されています。

Multi-Sigmaの利用

アルミニウムのアップグレードリサイクル過程に必須である加工熱処理において、高強度かつ高延性な再生アルミニウム合金展伸材を製造するための条件探索に、Multi-Sigmaを用いたAIデータ分析が活用されました。Multi-Sigmaでは極めて少ない実験データから予測や最適化が実現可能であり、当該研究論文では18個の実験データのみを用いてデータ分析を行なっています。

さらに、Multi-Sigmaを用いると複数の入力変数・複数の目的変数を同時に分析することも可能であり、加工熱処理の分析では説明変数6個と目的変数4個を取り扱っています。目的変数は、硬さ、引張強さ,耐力、及び延性ですが、Multi-Sigmaを用いた分析の結果、硬さ、引張強さ、耐力の3つのパラメータの間には正の相関があり、これら3つのパラメータと延性の間には負の相関があることがわかりました。その結果、例えば硬さと延性はトレードオフの関係であり、そのような条件の下でパラメータ最適化が必要になることがわかりました。

アルミニウムのアップグレードリサイクルは産業界から期待されている技術であり、関係省庁や大学、国立研究機関、企業、協会などが関わる「NEDO 先導研究プログ ラム / 新技術先導研究プログラム」のもとで研究が推進されています。このような高度な技術を要求されるプロジェクトにおいても、株式会社エイゾスのMulti-Sigmaを用いたAIデータ分析が貢献しています。

論文情報

論文:Role and Potential of Aluminium and Its Alloys for a Zero-Carbon Society
著者:Shinji Kumai
ジャーナル:Materials Transactions, Vol. 64, No. 2
発行年:2023年
DOI:https://doi.org/10.2320/matertrans.MT-LA2022009