背景:
体外設置型動圧浮上遠心血液ポンプの動圧軸受には、複数の設計パラメータが存在します。これらの値を変えると、人工心臓の評価指標である(1)動圧軸受の発生力(Thrust力)と(2)赤血球損傷係数に影響を与えます。本プロジェクト(注)では、3DCADとComputational Fluid Dynamics(CFD)を組み合わせたシミュレーションデータから、Multi-Sigma®を用いてサロゲートモデルを構築しました。当該サロゲートモデルを用いて予測、要因分析、多目的最適化を実行しています。
1.Multi-Sigma®を用いたThrust力と損傷係数の要因分析
Multi-Sigma®を用いて、50回程度のシミュレーション結果からサロゲートモデルを構築しました。本サロゲートモデルは、Thrust力と赤血球損傷係数の予測において、それぞれ相関係数が0.8733、0.8547と、高い予測精度を示しました。

2. Multi-Sigma®を用いたThrust力と損傷係数の要因分析
Multi-Sigma®を用いて感度分析に基づく要因分析を実行しました。その結果、Thrust力と損傷係数の両方に溝の深さが大きな影響を与えていることがわかりました。また、Thrust力に対しては、入口側と出口側の溝の深さが逆の影響を与えることがわかりました。

3. Multi-Sigma®を用いたThrust力と損傷係数の最適化
Multi-Sigma®を用いて構築したサロゲートモデルから、多目的遺伝的アルゴリズムを用いることで、Thrust力の最大化と損傷係数の最小化を同時に達成するためのパレート曲線を得ることに成功しました。多目的最適化機能により得られたパレート曲線の中から、望ましい結果(この場合は右下方向に存在する点)に対応する設計パラメータの値を採用することで、高性能な人工心臓を開発することが可能となります。

(注)技術で未来拓く 革新的実験計画法 研究開発AIで効率化 日刊工業新聞2021年2月18日
本件は、上記事例で使用したデータを元にケーススタディ用に再計算を実施したものです.
https://aizoth.com/2021/03/nks210218/
https://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2020/nr20201013/nr20201013.html