Multi-Sigma®による
CAEサロゲートモデル構築と最適化
~多様な乗員体格に対応した自動車の安全設計~

株式会社エイゾスのAI解析プラットフォームMulti-Sigma®を活用し、CAEサロゲートモデルを構築しました。多様な乗員体格を考慮した上で、自動車の安全装置に対する最適設計解を導き出した事例をご紹介します。

1. Multi-Sigma®による安全性予測シミュレーションのサロゲートモデル構築

Multi-Sigma®を用いて、14ケースという限られた交通事故シミュレーション結果から、サロゲートモデルを構築しました。具体的には、事故時に不利な姿勢で乗車していた小柄な成人女性および成人男性の乗員を対象とした腹部傷害のCAEシミュレーション結果を学習させることで、少量のデータにもかかわらず、高い予測精度を持つサロゲートモデルの構築に成功しました。

2. Multi-Sigma®による傷害リスクに強い影響を示す要因の分析

Multi-Sigma®の要因分析機能により、事故時に不利な姿勢で乗車していた場合でも、シートベルトの取付位置を前方かつ下方に設定することで、シートベルトが過剰に腹部に侵入する事による傷害リスクを低減できることが明らかになりました。さらに、同一設計条件下においては、成人男性よりも小柄な成人女性の方が腹部傷害リスクが高い傾向にあることも確認されました。

3. Multi-Sigma®による体格差を考慮した安全装置の設計解の導出

Multi-Sigma®の最適化機能では、入力変数に制約を設けた上で最適な設計解を探索できます。今回、小柄な成人女性の腹部傷害リスクが高かったため、体格を同条件に固定し、シートベルト取付位置を0~40mmに制限して、傷害リスクを最小化する設計解を導出しました。また、右図中の赤色で示したエリアは腹部への侵入が生じる受傷リスク領域であり、設計限界の明確化にもつながりました。

(注1)データソース: Saito, H., Pipkorn, B., and Lubbe, N., “Understanding the Influence of Seat Belt Geometries on Belt-to-Pelvis Angle Can Help Prevent Submarining,” SAE Int. J. Trans. Safety 10(2):463-481, 2022, https://doi.org/10.4271/09-10-02-0017.
(注2)サロゲートモデルの構築には14ケースを学習用、4ケースを検証用として使用。
(注3)体格は「0:成人男性(平均体格)」「1:小柄な成人女性」と定義。
(注4)腹部傷害指標には、骨盤の上前腸骨棘を基準としたシートベルトの腹部最大侵入量を使用。