コンクリートの配合比率からコンクリートの圧縮強度を予測することは、土木工学の分野における研究として重要なものの1つです。今回のMulti-Sigma®を用いたケーススタディでは、Kaggleのデータベースにあるコンクリートの配合比率等のデータと圧縮強度のデータを用いて、(1)未知の配合比率等のデータに対する圧縮強度の予測、(2)コンクリートの圧縮強度に影響を与える要因分析、(3)コンクリートの圧縮強度を最適化する配合比率等の条件探索、を行いました。これら分析は、すべてMulti-Sigma®上でノーコードで実行可能です。
1. Multi-Sigma®を用いたコンクリートの圧縮強度の高精度予測

上記の説明変数からコンクリートの圧縮強度[MPa]を予測するために、1,030件のデータを930件の学習データと100件の検証用データに分割し、Multi-Sigma®を用いて学習データからニューラルネットワークモデルを構築しました。予測結果の精度に関しては、相対誤差が5.14%、RMSEが2.31、相関係数が0.98となりました。

2. Multi-Sigma®を用いたコンクリートの圧縮強度の要因分析
一般的に、ニューラルネットワークなどの機械学習手法を用いてAIモデルを構築しても、説明変数と目的変数の関係性を分析することは容易ではありません。Multi-Sigma®では、感度分析に基づく要因分析機能を搭載しており、各説明変数が目的変数に与える影響を評価することが可能です。本データに基づく分析では、製造からの経過日数を増加させることがコンクリートの圧縮強度に最もポジティブに影響することがわかります。また、セメント量と高炉スラグ量の比率を増加させることも、コンクリートの圧縮強度にポジティブに影響します。一方で、水量や細骨材量の比率を増加させるとコンクリートの圧縮強度にネガティブな影響を与えることがわかります。

3. Multi-Sigma®を用いたコンクリートの圧縮強度の最適化
Multi-Sigma®で構築したAIモデルを用いて、遺伝的アルゴリズムに基づいた最適化を実行することができます。本ケーススタディでは、コンクリートの圧縮強度を最大化する条件を探索します。右図より、世代数を経るごとに、コンクリートの圧縮強度の最大値・最小値は増加していくことがわかります。最も圧縮強度が高くなる条件は、製造からの経過日数が172日、セメント量は397.87[kg/m³]、高炉スラグ量は358.93[kg/m³]、水量は133.76 [kg/m³]、細骨材量は737.00 [kg/m³]などと求められます。このように、最適なコンクリートの配合比率等をAIモデルを用いて探索する機能は、現実の業務でも利用されることが期待されます。

(データ) Kaggle:Concrete Compressive Strength Data Set (https://www.kaggle.com/datasets/elikplim/concrete-compressive-strength-data-set)