アルツハイマー病は早期発見が難しく、発症前の予測が治療や介入において重要です。ここでは、臨床データと脳画像データを用いて、Multi-Sigma®のニューラルネットワークによりアルツハイマー病発症リスクの予測モデルを構築し、要因分析を行った事例を紹介いたします。
1. 解析対象としたデータ
Kaggleの公開データセットから説明変数として認知機能評価(MMSE、CDR)、脳画像データ(eTIV、nWBV、ASF)、性別(女性:0, 男性:1)、年齢、教育年数、社会経済的水準(1~5)を使用しました。目的変数は健常(0)または認知症/認知症へ進行(1)です。
2. Multi-Sigma®を用いたアルツハイマー病リスク予測
Multi-Sigma®のニューラルネットワークによる予測モデルは96.0%という高い精度を達成し、AUC値は0.973と優れた識別能力を示しました。テストデータ75例中、真陽性(TP)が34例、真陰性(TN)が38例、偽陽性(FP)が0例、偽陰性(FN)が3例でした。

3. Multi-Sigma®を用いた要因分析
Multi-Sigma®の要因分析機能により、アルツハイマー病リスク予測における各変数の影響度が明らかになりました。特に臨床認知症評価尺度(CDR)は42.2%という大きな正の影響を示しました。
一方、負の影響としては、推定総頭蓋内容積(eTIV)が-10.9%、教育年数が-7.36%、ミニメンタルステート検査(MMSE)が-6.98%となっており、これらの要因がアルツハイマー病リスクの低減に関連している可能性が示唆されました。

4. まとめ
アルツハイマー病リスクの予測において、Multi-Sigma®のニューラルネットワーク分析により96.0%という高精度が実現されました。中でもCDRが最も重要な予測因子であり、それに加えてeTIV、教育年数、MMSEもリスク予測に大きく貢献することが分かりました。これらの指標を活用することで、より早期の段階で介入できる可能性が期待されます。
(データ) Kaggle:Alzheimer Features (https://www.kaggle.com/datasets/brsdincer/alzheimer-features)