Multi-Sigma®を利用すると、化合物の組成と基本的な結晶情報のみを用いてイオン伝導率を高速に予測できるようになります。 (1) 化合物の組成などを入力として主要な構造特性と動的特性を予測するサロゲートモデルと、(2)主要な構造特性と動的特性を入力として18桁に及ぶイオン伝導率を予測するサロゲートモデル、の2つを連結することで高精度な予測を実現します。このアプローチでは、DFTや分子動力学シミュレーションは必要ありません。そのため、固体電解質の初期段階のスクリーニングを大幅に高速化させることができます。
1. AI連鎖解析
固体電池の研究を発展させるためには、リチウムイオン伝導性材料の迅速なスクリーニングが不可欠です。しかし、実験によるイオン伝導率測定には限界があり、また、DFT/MDシミュレーションは計算コストが高くなります。Multi-Sigma®を利用すれば、2段階サロゲートモデルを構築することでこの課題を解決することができます。第1段階では、組成と結晶データから材料記述子を導出し、第2段階ではこれらの記述子からイオン伝導率とそのクラスを推定します。これにより、第一原理シミュレーションを実行することなく、候補材料の大規模なスクリーニングが可能になります。
ステージ1では、オープンな材料データベースを用いて、組成と結晶データから主要な構造、熱力学的特性、イオン輸送特性を予測します。これらの特性は、格子環境がLiイオンの移動度をどのように支配するかを捉えます。ステージ2では、これらの特性を用いて、イオン伝導率を18桁にわたって高精度に推定します。

2. AI予測
2段階モデルを用いると、、10⁻¹⁷から10⁻¹ S/cmの範囲でイオン伝導率を高精度に予測することができます。ステージ1では輸送に関連する記述子を生成し、ステージ2ではそれらを用いて実験データとよく一致する伝導率を推定できます(Log R² = 0.80)。
ステージ1:中間特性予測

ステージ2:イオン伝導率の予測

本資料は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託業務(JPNP23001)の一部の結果を要約したものです。
データ出典:Rajapriya, N.; Yoshitake, M.; Nagata, T.; Kawajiri, K. Two-stage AI surrogate for predicting ionic conductivity from crystal structure using DFT and topological descriptors. Presented at the ACS Fall 2025 National Meeting & Exposition, Washington, DC, August 19, 2025; COMP Poster Session, Poster 817, Abstract 4308994.
