Multi-Sigma®を用いた波形データの解析

株式会社エイゾスのAI解析プラットフォームMulti-Sigma®を用いて、津波シミュレータのサロゲートモデルを構築し、波形データの予測を行った事例をご紹介します。

1. Multi-Sigma®によるサロゲートモデルの構築

Multi-Sigma®を用いて波形データのサロゲートモデルを構築するためには工夫が必要です。第一歩として、サロゲートモデル構築のためには、事前にシミュレーションを複数回実行し、その入力データと出力データをAIに学習させます。

Multi-Sigma®によるサロゲートモデルの構築

AIモデルを学習させるアプローチの1つは、時系列予測を多出力回帰問題に変換することです(図a→図b)。
逐次予測ではなく、各時刻t_iのそれぞれの津波の値を、AIモデルの出力データとして学習させるアプローチです。

Multi-Sigma®によるサロゲートモデルの構築
Multi-Sigma®によるサロゲートモデルの構築
Multi-Sigma®によるサロゲートモデルの構築

2.Multi-Sigma®による波形データの予測

このようにしてMulti-Sigma®で波形データを学習させたAIモデルを用い、学習データに含まれない津波高さおよび発生位置(緯度・経度)に対して、ある観測点における水位の時系列を予測しました(右図)。観測値(青実線)と比較したところ、当該モデルの予測波形(赤点線)は全体形状や主要ピークの時刻・振幅を良好に再現し、高い適合性を示しました。

Multi-Sigma®による波形データの予測

3. 波形データ解析のさらなる工夫

Multi-Sigma®ではAIモデルの出力変数を100種類まで取り扱うことができます。そのため、上記の図bで離散かした点は100点までの取り扱いが可能です。しかしながら、観測時間Tが長くなるほど、取り扱える上限である100点という制約を考えると刻み幅ΔTが大きくならざるを得ません。また、上記の事例では津波高さと位置(緯度・経度)をある程度限定的な範囲で実行しましたが、さらにパラメータ値が広範にばらつく場合やパラメータ数が増える場合は予測が困難になります。その場合は、波形データを基底関数展開してその係数をAIモデルで予測させるというアプローチもあります。詳しくは弊社にお問い合わせいただければと思います。

波形データ解析のさらなる工夫
例:フーリエ級数展開で
    波形データを表現する場合

(注)津波データに関しては、実際のデータを模した人工データを用いています。