Multi-Sigma®を用いた革新的ローレンツサイクル(ALC)のサロゲートモデルによる多目的最適化

背景
カーボンニュートラル社会の実現に向け、高効率な温冷熱エネルギー変換技術の開発が重要となっています。現在、コールドチェーンやデータセンター、DAC等の次世代コンビナートのエネルギー効率化に向けて、-30℃程度から150℃程度での大温度グライドでの熱マネジメントシステムの開発が必要とされています。このような課題に対し、有機ランキンサイクルを活用した革新的ローレンツサイクル(ALC)が提案されています。本研究では、ALCによるヒートポンプに対して、サロゲートモデルを構築し、多目的最適化による高効率な運転条件の探索を行いました。

1.Multi-Sigma®を用いた温度と成績計数(COP)の予測 

Multi-Sigma®を用いて、給湯用ヒートポンプのサイクルシミュレーションデータを基にサロゲートモデルを構築しました。本サロゲートモデルは、温度とエネルギー効率を表す成績係数(COP)で、それぞれ相関係数0.925、0.888と、高い予測精度を示しました。

説明変数
代替フロン組成比
熱源流量 [ton/h]、
冷熱源流量 [ton/h]
熱源温度 [℃] 、
圧縮機圧力 [MPa]
冷媒流量 [ton/h]

 目的変数
 温度 [℃]  
 成績係数(COP)

2. Multi-Sigma®を用いた温度と成績計数(COP)の要因分析 

温度は熱源温度が正の影響、冷熱源流量が負の影響を示しました。COPは冷熱源流量が正の影響、冷媒組成比が負の影響を示しました。

3. Multi-Sigma®を用いた温度と成績計数(COP)の要因分析 

対象設備の仕様(注)の条件下で、温度110℃(±0.1℃)、COPの最大化を目標として多目的最適化を実施し、以下の最適運転条件を得ました:
この条件で、温度110.03℃、COP 6.22を達成しました。

(注)熱源流量344.1 ton/h、冷熱源流量113.1 ton/h、熱源温度75℃

Multi-Sigma®を活用することで、複雑なヒートポンプシステムの挙動を高精度に予測するサロゲートモデルを効率的に構築でき、要因分析や多目的最適化も容易に実施することができました。この成果は、産業・民生分野における省エネルギーとCO₂削減に貢献することが期待されます。

参考資料:NEDO先導研究プログラム / 革新ローレンツサイクル熱マネジメント技術
https://www.nedo.go.jp/content/800019340.pdf
https://www.nedo.go.jp/content/100974246.pdf